嘘は感情ではなくて、環境によって「つかされる」
新世界 西野亮廣 著 (KADOKAWA)
私の尊敬する人が、著者が主宰のオンラインサロン「西野亮廣エンタメ研究所」に参加していると聞き、本書を手に取りました。
著者の西野亮廣といえば、「キングコング」として非常に有名なお笑い芸人さんですが、最近では絵本「えんとつ町のプペル」や、ビジネス書「革命のファンファーレ 現代のお金と広告 (幻冬舎単行本)」でベストセラーを連発している気鋭の作家でもあります。
本書「新世界」には、著者の考えてきたこととやってきたこと、今考えていることとやっていることを、方法論の説明も交えて書いてあります。
具体的にも抽象的にも、人間「西野亮廣(にしのあきひろ)」が全編で語られています。
言葉が意見を伝える道具ならば、まず、意見を育てる必要があるのではないか?
(「言葉にできる」は武器になる。 (梅田悟司 著 ) より
この文の示す通り、意見が育った言葉は心に刺ささる。
それを実感できた一冊になりました。
「新世界」の内容
本書は三章構成になっています。
第一章 貯信時代
第二章 オンラインサロン
第三章 新世界
オンラインサロン、クラウドファンディング、レターポットなどなど、「今」のキーワードを著者の解釈で大いに語られている本書。
ここでは敢えて、前著「革命のファンファーレ」でも語られていた大テーマを取り上げて思います。
『嘘は感情ではなくて、環境に「つかされる」んだ。』
第一章「貯信時代」で語られているのは、信用の重要性と信用を得る方法。
信用を得るには「嘘をつかないこと」著者は断言しています。
仕事や立場などで、自然と嘘をつくことを求められる。
CMやレポーターなど、お約束の振る舞いをすることは、つまるところ嘘をついているということです。
この方向性で露出が増えていくと、信用度を落としつつ認知を増やしていくので、そのギャップがそのままリスクになります。
不倫報道で手痛いダメージを受けたベッキーなどが好例でしょう。
嘘をつかないことが信用を稼ぐ一番の方法。
だけど嘘をつかないことは難しい。
それは、『嘘は感情ではなくて、環境に「つかされる」から。
だから嘘をつかなくて良い環境に自分を置くことが一番良く、嘘をつかなくても良い環境でも生きていけることが必要になるのです。
嘘と私の毎日
毎日、というか物心ついてからこれまでの間、私は心の中のどこかにずっとしこりを感じてきました。
それは時に大きく、固く、痛くもありますが、時には腫れも疼きも無いことも。
でも確実に存在していて、私はそれを本当の意味で忘れたことはありません。
これまで生きてきたその各ステージで、私は恒常的な嘘をついてきました。
その嘘が心を窮屈にして意見の成長を阻害し、言葉や振る舞いの力を奪い、他者からの信用を稼ぐことができないのです。
その嘘の一つ一つは、ちょっとした見栄や小さな誤魔化しであっても、それらを守るために雪だるま式に嘘が増えていきます。
小さい頃からずっとそうでした。
気がつけば呼吸するように嘘をついていたことも。
大人になった今でもそうです。
嫌な気持ちがする時の本質はいつも同じ。
仕事が嫌なんじゃない。
会社が嫌なんじゃない。
上司や部下の顔色を伺うこと、
仕事ができるフリや、真剣に打ち込んでいるフリをすること、
隙きを見てサボっていること、
有給休暇をとらせない同調圧力、
桁外れな役員報酬に面と向かって意義を唱えられないこと、
つまり、嘘をつくことが嫌で、それは嘘をつかれている人も同様で、その嘘を一番多く聞いているのが自分で……。
嘘は時に魔法のように事態を良く見せることができるのかもしれませんが、その瞬間をそう見せかけているだけです。
気がつけば「私は嘘をつかざるを得ない環境」と同化してしまっているのかもしれません。
家庭があるから。
守るものがあるから。
もうそんな言い訳もほどほどにして、方向性を変えようと本書を読んで思いました。
「嘘をつかない」ということは、人生の目的や人生の意味を見つける方法に他ならないと見つけたり。
文章礼賛
本書は内容も素晴らしいと感じましたが、はっきり言って文章も最高です。
もの凄く読ませる文章です。
口語体を巧みに使っていて、まさに「声が聴こえるような文体」となっています。
その声質は抜けが良くて、時に興奮気味に上ずっていて、低域の振動の粒が揃ったキングコング西野の声に他なりません。
まさに著者の話芸がそのまま文章になっていると感じました。
ビジネス書を読んでいるつもりが、気づいたら二人で話をしているような気持ちになる独特の文体で、著者と自分自身の感情と心情を見失うことなく、最後まで一気に読むことができました。
1ページあたり1列30文字16行の構成も、一文ごとの改行も、空行の多用も、全て著者の話芸を表現するのに一役買っています。
言っても仕方のないことですが、世の中のあらゆる方法論や、勉強するべきことが全部この文体で書かれていれば素晴らしいのに……。
まとめ
本書に私が痛く感銘を受けたということは、ここまでお読みいただいた方には十分伝わったと思います。
しかし、引っかかった部分もありました。
それは、「セックスをするのでホテル代がかかる」「性欲が強い」「『評価経済社会』は出ても岡田斗司夫の名は出ない」という部分ですが、取るに足らないことです。
今読んで、自分も「今」というステージに参加したいと感じられた一冊です。
オンラインサロン「西野亮廣エンタメ研究所」では、最新作の絵本「チックタック 約束の時計台」のプロジェクトを全力で進めているようです。
微力ながら私もこちらを予約して、本書「新世界」へのお礼としたいと思います。
読み次第、最速でレビュー書くぞ!