彼女の声が聴こえる。それは即ちこの本の文章そのものだ。
キラッキラの君になるために ビリギャル真実の物語
小林さやか(著) マガジンハウス
まず最初に言っておきたいことは、
「すいません、マジなめてました。ごめんなさい」
ということです。
本書は「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」の、ビリギャルのモデルとなった方の著作です。
学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話[文庫特別版] (角川文庫)
- 作者: 坪田信貴
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2015/04/10
- メディア: 文庫
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もう「ビリギャル」が発売されてから4年近く経っていることもあり、
「ブームが過ぎてからこの手の本をだしてもなぁ」
と、数時間前の私は本当にそう思っていたのです。
「ビリギャル」は素晴らしい本だとは思いますが、すでに大学受験の年齢を大きく大きく超えて、かつ子供がまた小さい私には「自分はこの本の対象ではないな」という疎外感に似た感覚がありました。
大学受験で頑張れなかった自分に拗ねていたわけです。
それでも「ビリギャル」を完読し、母親のああちゃんの著作も完読し、
ダメ親と呼ばれても学年ビリの3人の子を信じてどん底家族を再生させた母の話
- 作者: ああちゃん,さやか(ビリギャル)
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2015/02/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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映画も1人で観に行ったこの屈折した私が、満を持して本書「キラッキラの君になるために」を読んで得た感想が、
「すいません、マジなめてました。ごめんなさい」
なのです。
ビリギャルはこの本のためにあった
本書の内容は、中盤までは大学受験までの話で、中盤以降はその後、大学入学以降の話です。
かいつまんで言ってしまえば、「大学受験は劇的だったけど、入学後も色々アップダウンがあったし、それからもずっと色々あったよ」という話です。
その「色々あった」中から得た経験をもとにして、極めて個人的な体験談をベースに本書は綴られています。
このタイプの本だと「要は作者の自慢話でしょ」とか「ただの自分語り」などと、読まずに判断してしまいがちな私ですが、本書は違います。
「著者が本当に思っていることを、本当に本気で書いた」に違いないと私は確信しています。
「私の人生を変えてくれた、恩師の話をします」。そう言って私は高校2年まで全然勉強しないで、大学なんて行くつもりなかったんだけど、この人に出会ってがんばれて、いまここに、いられるんんだということ。坪田先生は学校の先生とは違って、私の話をちゃんときいてくれた初めてのオトナだったこと。どんなときも私を信じて、支え続けてくれたこと。慶応に受かったとき、泣きじゃくって喜んでくれたこと。いろんな話を、泣きながら話した。もう、あたりを見渡すと、ほかの組はとっくに面接を終えていた。
(172ページより)
本書中盤で出てきたこの場面で、私は確かに著者の声を聴きました。
話しながら、自分が話す大好きな人の話に夢中になっていって、息を切らしながら、次々にエピソードが紡がれていくその声を。
そこからはずっと、彼女の話をうなずきながら聴いて、気がつけば読了していました。
著者は本書を執筆しながら何度も泣いたのでしょう。
色々なことを思い出しながら何度も何度も泣いたのでしょう。
きっとそうに違いないと確信させるほどに、本書は著者の声が震える様が、鼻をすする音が、身振り手振りが、聴こえてくるのです。
「ビリギャル」から始まった一連の著作は、ひょっとすると本書のためにあったのかもしれません。
そう思えるほどに、不思議な臨場感のある、そばに人を感じる文章でした。
まとめ
本書には、作者が体験談を語る他に、作者が考える「夢を叶えるための6つの法則」が出てきます。
ですが、それはほんの一部分で、その法則の出来自体で本書の価値が左右されるものではありません。
(ただの成功系の啓発本ではないということです)
「思いの強い人が、自分の思いを直球で文章に出し切る」ということの迫力が本書にはあります。
それが声が聴こえるという現象につながったのでしょう。
私の感覚では、大枠で著者と同じ感情タイプの人は全体の4分の1程度はいると考えています。
もちろん私もその1人です。
自分が好きな人の話を熱く語って周りをポカンとさせたことのある方、
自分が話す内容で自分が泣けてきたことがある方、
そんなあなたには間違いなくおすすめの一冊です。
最初は信じられないぐらいダサいと思ったのですが、看板に偽りなしと言わざるをえないでしょう。
「キラッキラの君になるために」本書はその助けになります。
そして、軽率な先入観を持って本書を読み始めたことに、
「すいません、マジなめてました。ごめんなさい」。