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(にちにちどくしょ)最新おすすめ本のレビューです。

スピリチュアルは抽象度を天高く上げて野暮を抜けばわかる

そうだ 魔法使いになろう! : 望む豊かさを手に入れる

そうだ 魔法使いになろう! : 望む豊かさを手に入れる

吉本ばなな  大野百合子(著) 徳間書店

 

この本のゲラを読者の目線で読んでいたら、つい「この人たち、頭大丈夫?」と思ってしまうくらい、突き抜けた内容の対談でした(笑)。 

吉本ばなな 7ページ まえがき より)

 

このまえがきに偽りなし!

 

本書は全編通してガチのスピリチュアル対談であり、スピリチュアル界のガールズトークであり、スピリチュアル界の井戸端会議です。

 

つまり、スピリチュアル本の読み方を知らない読者には非常に難解である、もしくは「いっちゃってる人達」の本として読解は困難なものとなるでしょう。

 

しかしながら、本書ではスピリチュアルなことに対してオープンスタンスな読者以外は対象にしていません。

 

それは、著者たちが

 

「スピリチュアルについての説明や証明なんて、無駄なことはやらないよ。『こういうこと』ってわかる人が読んで楽しんでね」

 

と考えているからと私は感じました。

 

では逆に、スピリチュアルなことも積極的に理解していきたい理屈屋、つまり私の様な人間はどうしたら本書がきちんと読めるようになるのか、私なりに考えてみました。

 

たったひとつの冴えた読み方

 

本書は読めば読むほど突っ込みどころが満載です。

 

前世、幽霊、精霊、大天使、宇宙人などなど、これらの際どいキーワードが中年女性の間で全284ページに渡り当たり前のようにキャッチボールされているわけですから。

 

いちいち声を上げて突っ込んでいたらキリがありません。

 

「ならば諦めて一旦何も考えずに読んでみるか」

 

そう思い立って無心で読み進めていったのが、ヒントになりました。

 

心の中に沸き立つ「否定(突っ込み)」を無視すれば、自然と全てを受け容れるスタンスに立てるのです。

 

そして、その「全てを受け容れるスタンス」こそが本書のようなスピリチュアル本を読むための、最初に必要な心構えだと私は考えました。

 

本書では著者二人がスピリチュアルな会話をひたらすら続けますが、お互いの話を一切否定しません。

 

「全てを受け容れるスタンス」に立っているのです。

 

著者と同様のこのスタンスを得てはじめて、本書の内容を理解すること(感じること)ができるようになるのです。

 

スピリチュアルを高度な比喩として捉える

スピリチュアル否定派の方々に、あえてわかりやすく伝えるために、スピリチュアルは「高度な比喩」として一旦捉えてみることをおすすめします。

 

大野 人間が平均して転生する数は350回と言われていますが、ばななちゃんはそれよりたくさんの転生がありますね。

 ゲリー・ボーネルさんから、何か言われましたか?

吉本 「次はもう生まれてこない」と言われました。

(23ページより)

※ゲリー・ボーネルさんとは、人の前世が見えるすごい人

 

この二人のやり取りをツッコミを入れながら読むと、

 

「『平均して転生する数』ってどこで平均をとったんじゃい!」

「そもそも『転生する前提』かい!」

「おばちゃん同士で「ちゃん」付けかい!」

吉本ばななもサクッと『転生する前提』を受け容れるんかい!」

 

などなど、突っ込みが激しすぎて全然本文の内容が頭に入ってきません。

 

これは、一つ一つの文章を具体的に解釈して、自分の見方と違う点を言葉にしている状態だからです。

 

では、この『具体的な解釈』という行為自体が、本書の読み方として適していないとしたらどうでしょうか?

 

対局にある『抽象的な解釈』で臨んでみたら……。

 

「『転生する回数が350回』ってことは、『人が持っている時間や経験は計り知れない量』っていうことかな?」

「ばななちゃんは、ゲリー師匠から「次はもうない」って言われたんだ。ばななちゃんとゲリーさんの関係性から紡がれた言葉なんだろうな」

 

といった感じでしょうか?

 

この様な感じ方を薄ぼんやりと施しながら、自分が持っているよりも高度な抽象度で語られていることなんだと割り切って全て受け容れる。

 

これこそが本書の正しい読み方なのです(私的に)。

 

まとめ

本書はスピリチュアル本としては非常に読みやすいものになります。

 

それは、「吉本ばなな」という大作家が極めて自然体で発している言葉だからだと私は考えています。

 

著者の吉本ばななさんは前著『「違うこと」をしないこと』でもガッツリとスピリチュアルなことを語っています。

 

「違うこと」をしないこと

「違うこと」をしないこと

 

ブレないスタンス、自然体、そして大作家の有名性が相まって、本書は「高度に抽象化された人生論」としての「スピリチュアル入門書」となっているのだと私は感じました。

 

本書を読んで私が得たものは、

 

「白とか黒とか、善とか悪とか、賢いとかバカとか、正しいとか間違ってるとか、明暗とか損得とか、二元論を真に受けてその言葉の世界で生きているのは野暮ったい。この野暮さは溶かしていきたい」

 

という感覚です。

 

さあ、私のスピリチュアル歴が今スタートしましたよ。

 

 

そうだ 魔法使いになろう! : 望む豊かさを手に入れる

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